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<128万人県都のいま>(上)イベントでまちPR 市民目線とズレも (2017年5月5日 東京新聞)


<128万人県都のいま>(上)イベントでまちPR 市民目線とズレも

 「ゼロベースで見直したい」「もっと税金の使い方を考えないと」

 先月二十四日に開かれた立候補予定者討論会で、現市政に新人候補二人から厳しい批判が飛んだ。やり玉に挙がったのは、清水勇人市長の二期目に、次々と開催された「大型イベント」だ。

 昨年は、国際自転車レース「さいたまクリテリウム」(二〇一三年~)、さいたま国際マラソン(一五年~)、国際芸術祭「さいたまトリエンナーレ」(一六年~)の三つが初めてそろって開催された。クリテリウムに約十万人の来場者が訪れるなど、それぞれが一定のにぎわいを見せたが、市の負担金は計十二億円以上にも達した。

 市議会でも大型イベントをめぐる議論は何度も紛糾している。昨年十月には、イベント費用を理由に前年度決算が不認定に。昨年十二月には「イベント事業見直しと担当職員の過大な残業改善についての請願」が賛成多数で採択され、二月には議会の追及でクリテリウム関連予算が一度は取り下げを余儀なくされた。

 対する清水市長は、批判には屈しない姿勢をとり続けている。いわく「計八十六億円ほどの経済波及効果があった」「スポーツのまちを広くアピールできた」「都市イメージを国内外に発信していく上で高い効果がある」-。

 すでにクリテリウムと国際マラソンは今年の開催も決定。トリエンナーレは本来の意味の「三年に一度」にはこだわらないものの、継続的に開催する予定だ。

 合併から十六年たってもいまだに一体的な存在感に欠けるさいたま市。市が、そんな「存在感の薄さ」を払拭(ふっしょく)する起爆剤としての役割を、イベントに託そうとしていることは確かだ。

 ただ、スポーツや文化イベントは関係者からも「十年、十五年たたないと本当の効果が分からない」との声が出るほど意義や効果が図りづらい。だから「その予算があれば、ほかのことができるのでは」と不満を持つ人は消えない。

     ◇

 たとえば、子育て。市は先月、四月一日時点での「待機児童ゼロ」を実現したと発表したが、これに対して子どもが保育園に入れなかった親たちから「実態と違う」という声が相次いでいる。親が育児休業中だったり特定の保育所だけを希望したりした児童の数字が、「待機児童」として扱われていないからだ。

 岩槻区の中川裕貴さん(32)もその一人。妻(27)と長女(1つ)の三人暮らしだが、希望した保育園への入園は今年もかなわなかった。

 現在、妻は中川さんの帰宅後の夜九時からアルバイトに出掛ける。終わるのは深夜一時。「娘も遅寝遅起きになりがちで申し訳ない」と妻は語る。中川さんの帰りが遅くなるときの対応も悩みの種だ。

 「本当は昼間に働きたいが、来年以降も入園は難しいと思う」と悲観的な二人。中川さんは「さいたま市は、市がアピールするほど子育て環境の良いところではない」と話す。

 現在の市の認可保育所整備計画は、今年四月の「待機児童ゼロ」を目標につくられた。一五、一六年度に定員を千三百人ずつ増やした後はペースを落とし、年間四百人ずつ増やすことになっている。一七年度は計画を大きく上回る「千三百人増」の予算が組まれたが、計画自体は今も変わっていない。

 そんな中で市内の子育て関係四団体は先月、保育園や学童保育施設の大幅増などを求める政策提言を発表した。市学童保育連絡協議会の加藤哲夫さん(61)は「イベントよりも子育て環境を整えることが『選ばれるまち』につながるはずだ」と語る。

     ◇

 合併から十六年。四つの市が一つになってできたさいたま市の人口は、百二十八万人を超えた。政令市としての形を模索してきた市は、今後どこへ向かうのか。七日告示の市長選を前に、県都の今に迫った。 (井上峻輔)
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