ノーベル賞・梶田さんが母校・埼玉大で講演「大切なことに出合う準備を」
素粒子ニュートリノの研究でノーベル物理学賞を受賞した東京大宇宙線研究所長の梶田隆章さん(57)が22日、母校の埼玉大で受賞記念講演を行い、接ぎ木で分けた物理学者ニュートンの生家にあったリンゴの木を記念植樹した。講演では後輩学生約400人に「広く目と心を開いて、大切なことに出合う準備をしてください」とメッセージを送った。(宮野佳幸)
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「ニュートリノの小さい質量」と題した講演で梶田さんは、質量発見に至った経緯や、岐阜県飛騨市の地下にある観測施設「スーパーカミオカンデ」などについて説明。学生らは熱心にノートにペンを走らせた。また、自身の学生時代や研究生活を「非常によい師、仲間、プロジェクトに恵まれた」と振り返り、「本当にいつ大切な出合いがあるのかわからない。大切なことに出合う準備をして」と語りかけた。
質疑応答では、ニュートリノ検出に純水が使われていることについて男子学生が「なぜ水を使っているのか」と質問すると、梶田さんは「第1級の質問ありがとう」と応じ、「お金のことを考えると、水が一番簡単に、一番大きい装置が作れるからです」と答えた。その後、学生から梶田さんと妻の美智子さんに花束が贈られ、山口宏樹学長からは各界で活躍する卒業生に与えられる「埼玉大学フェロー」の肩書が入った金の名刺が手渡された。
植樹式では、山口学長が「毎朝リンゴの成長を見ながら学長室に通い、第2、第3の受賞者が出ることを祈りながら毎日過ごしたい」とあいさつ。梶田さん夫妻と山口学長ら4人で「科学の心を育てる記念樹」として親しまれるニュートン由来の木を、理学部の講義実験棟の前に植樹した。梶田さんは「本当にいい木を選んでくれた。少しでも多くの学生に埼玉大から学問の道に進んでほしい」と話した。
講演を聴いた理学部物理学科2年の滝口竜介さん(20)は「大先輩に会えて感激した。僕もノーベル賞受賞など大きなことを成し遂げたい」と感銘を受けていた。