順天堂要望 県の想定超える◇着工遅れる付属病院 埼玉高速鉄道の浦和美園駅から歩くこと約10分。柵に囲まれた広い草むらに「順天堂大学附属病院等整備予定地」の看板が立つ。
医師不足の解消をめざす県が3年前に誘致を決め、ベッド数は800と県内最大級。大学院や看護学部も併設し、3月に着工、2020年度に開業するはずだった。ところが土地の取得に手間取り、予定より建物が大きくなり環境アセスメントをする必要も出てスケジュールが狂った。いつ、どんな病院ができるのか、いまだに具体像は見えてこない。
人口減少や医療費の伸びを抑える国の方針などで病院の経営が厳しさを増すなか、病院誘致は、用地の無償貸与や建設費の補助など破格の条件を示すことでようやく実現した。ただ、順天堂側からの要望は県の想定を超えていた。
「緑に囲まれた癒やしの空間にしたい」。順天堂側は新病院のイメージをこう説明し、予定地の目の前に車の販売店があることに難色を示したこともあったという。周辺は区画整理が行われ再開発が進むエリアで、街路樹などもあまり整備されていない。「どこか殺風景な街並みを、洗練された『文教都市』にしたいようだ」(県幹部)。
近くの埼玉スタジアムでサッカーの試合がある日は周辺道路が渋滞する。「車を運転してやってくる急患が間に合わないのでは」と改善を望んでいるほか、スタジアムの周りに新駅をつくることや、病院の入り口の前にバスが着くようにすることも要望しているという。
学校法人順天堂の担当者は「私利私欲でわがまま言っているわけじゃない。せっかく作るのだから患者さんにとって使い勝手のいい病院にしたいだけです」。
上田清司知事は開業時期を「23年がひとつのめど。1年早いか1年遅れるか」と説明する。
【順天堂側の主な要望】・快適で清潔な街づくり
・病院用地の無償貸与
・建物の建設費、機器・備品の整備に必要な費用の半額補助
・救急など政策医療についての経常費助成
・病院開設までに、埼玉スタジアムの周辺に新駅をつくる
・建設予定地の中にある道路を廃道にする
・敷地の間を流れる川の上に上空通路を設置
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