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九条守れの俳句掲載拒否 俳人・金子兜太さん「文化的に貧しい」(2014年8月17日 埼玉新聞)

九条守れの俳句掲載拒否 俳人・金子兜太さん「文化的に貧しい」

 さいたま市大宮区の三橋公民館が発行する公民館だよりに、俳句「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の掲載を拒否した問題について、熊谷市在住の現代俳句を代表する俳人金子兜太さん(94)に聞いた。金子さんは「この社会に生きている人間を詠んだ当たり前の俳句を、お役人が拡大解釈した実に野暮(やぼ)で文化的に貧しい話」と語った。

 俳句は公民館だよりに掲載するため、公民館で活動しているサークルが選んだ。市側は「世論を二分されているテーマが詠まれている」などとして、掲載を拒否した。

 金子さんは、「九条守れ」の俳句を次のように語った。

 「『九条守れ』の女性デモという一つの日常を詠んだもので、特別な意味を込めて作ったわけではないでしょう。そもそも、この句のように社会で生きている人間を題材として詠むのは、現代俳句ではごくごく当たり前のこと。この状態に向かって政治的な尺度を持ち込むのは、野暮で文化的に貧しい話」

 「作者はデモには好意を持ったが、熱く共感したわけではないと私は受け取る。感受性の強い人なら普通のことで、どうしてこの句が問題なのか、ぜひ教えてほしい。結果として政治的な意味をお役人が持たせたのは、ご自身がご時世に過剰反応しただけ。作者としては当たり前の感銘を詠んだ句で、お役人に拡大解釈され、嫌な思いをしてお気の毒」

 金子さんは旧制水戸高時代の18歳の時に俳句を始め、俳句歴は今年で77年に及ぶ。加藤楸邨氏に師事し、戦後は社会に生きる人間を詠む「社会性のある俳句」を唱え、「社会性俳句の旗手」と呼ばれた。

 「それまでは、俳句は花鳥風月を詠むものという高浜虚子の影響力が強かった。それに対して、昭和初期の新興俳句運動や戦後になって私や仲間たちは『自然とともに社会に生きる人間を詠みたい』と主張した。今では自然そして社会に生きる人間を詠み取ろうとするのは、俳句の世界では当たり前になった。今回の句もそういう自由な気持ちの中で詠んだ句で、このような句は毎日、どこかで作られている」

 今回の俳句掲載拒否の問題を戦前の治安維持法による新興俳句運動弾圧と重ねる見方もあるが、金子さんは今回の方が根深い問題を含んでいると言う。

 「新興俳句運動の『現実を俳句に書く』とするリアリズムが危険視された。だから取り締まりは、新興俳句系の俳誌だったり運動を担っていた人たちで、俳句を詠む一般の人たちにはそれほど影響がなかった。今回は一庶民の一つの句をやり玉に挙げて大げさな問題にした。こんな拡大解釈のようなことが、お役人だけでなく社会で行われるようになったら、『この句は政府に反対する句だから駄目』などと、一つ一つの句がつぶされる事態になりかねない。有名な俳人だけでなく、一般の人たちも萎縮して俳句を作らなくなる。俳句を作る人の日常を脅かすもので、スケールは小さいが根深い問題だ」と警告する。

■新興俳句運動

 高浜虚子の弟子の水原秋桜子(しゅうおうし)が1931年ごろ始めた文芸運動。水原は自然だけでなく、人間の胸のうちや生活の事実を詠むことを主張した。主張に多くの俳人が共感し運動は広がっていった。この運動から、加藤楸邨(しゅうそん)、中村草田男(くさたお)ら有力な俳人が輩出した。純粋な文芸運動だったが、治安維持法によって、40年に「京大俳句」、41年に金子さんが投句していた「土上(どじょう)」など有力俳誌が弾圧され、新興俳句運動は壊滅する。
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「九条守れ」俳句掲載拒否 市に意見100件超、大多数が批判や苦情(2014年7月8日 埼玉新聞)

「九条守れ」俳句掲載拒否 市に意見100件超、大多数が批判や苦情

 さいたま市大宮区の三橋公民館が、毎月発行する公民館だより7月号の俳句コーナーに、公民館で活動するサークルが選んだ憲法9条を題材にした市民の作品掲載を拒否した問題で、市に寄せられた意見が7日までに104件に上ったことが8日、市教委への取材で分かった。大多数が批判や苦情だったという。

 掲載が拒否されたのは、さいたま市大宮区の女性(73)が詠んだ俳句「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」。

 意見は電話やファクス、メールで、市内にある公民館59カ所を所管する市教委の生涯学習総合センターや三橋公民館に寄せられた。同センターによると、公民館の判断に理解を示す内容も一部あったが、大多数が批判や苦情など否定的なものだった。

 同センターは掲載を取りやめた理由として、「世論が二分されているものは、一方の意見だけを載せることはできない。公民館の考えだと誤解されてしまう可能性もある」などと説明するが、市民の理解が得られない対応だったことが浮き彫りになった。

 市教委には現在、市内全館で発行している公民館だよりの明確な掲載基準などはないという。同センターは早ければ、今月中にも一定のルール作りを行う予定だが、「従来の考えを踏襲することになる」との方針を示した。

■掲載を申し入れ/共産党さいたま市議団

 三橋公民館が公民館だよりに憲法9条をテーマにした俳句の掲載を拒否した問題で、共産党さいたま市議団(山崎章団長)は8日、市教委の稲葉康久教育長に対し、俳句を次号に掲載することなどを求める申し入れを行った。申し入れ書では、「社会教育法23条は住民の活動を縛るものではなく、公民館自らを戒める法文。社会教育行政は政治学習や平和学習などでは多様な意見を表明し、交流の自由を保障する責務がある」などとする識者の意見を挙げながら、公民館の対応に抗議した。(1)作者に不掲載を謝罪し、次号に当該俳句を掲載すること(2)同様の問題が再発しないよう改善策を取ること―の2点を要求している。

 公民館を所管する市教委の生涯学習総合センターは、埼玉新聞の取材に、「共産党市議団には、再掲載も謝罪も行わないと回答した」と説明。「作者本人には、あらためて市の考えや不掲載とした経緯を直接話したい」との意向を明らかにした。

■「戦時中の言論統制」

 三橋公民館が公民館だよりに憲法9条をテーマにした俳句の掲載を拒否した問題で、東京大学名誉教授の大田尭さんと東京大学大学院教授の高橋哲哉さんは、埼玉新聞の取材に「戦時中の言論統制を思い出させる」などと述べた。

 さいたま市南区で6日に行われた映画上映会に出席した大田さんは「そもそも公民館は誰もが自由に利用ができ、意見を言える開かれた場。公民館側が掲載の可否を判断するのは、パブリックの域を超えている」と話した。

 高橋さんは「公民館側の対応は批判的な表現や言論を萎縮させ、戦時中の言論統制を思い出させる。俳句のような芸術の表現の場で、政治的中立の名の下に、制限を加えるのは憲法を超越した権力になっている」と指摘した。

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